書評 一万円起業
相当前に出版されていた一万円起業が二ヶ月近く前に文庫化されたので購入してました。もう読んでからも二ヶ月近く経過したので、読み返しつつ、思ったことを書いてみようと思います。
1万円起業 文庫版――片手間で始めてじゅうぶんな収入を稼ぐ方法
- 作者: クリス・ギレボー,本田直之
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2015/04/25
- メディア: 文庫
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勝算を感じるまでの壁
まず感じたのは、そんなうまいこといけば確かに起業したほうが良いでしょうね、ということです。同じようなことを思った方も多いのではないかと思います。敢えてそうだと思っているのに、「いや、そうじゃないかも」に期待して購入したというところはありました。
率直なところ、思った通りというか、期待通りで「はいはい」というところと、一応そうなんだーというところの半々くらいです。自分の得意なところと他人が興味があるところの重なったところを見つけてしまえばOKというのは、そりゃそうだろうけどさ、という気持ちになりますよね。
元手が少なくても上手くいくことがあることの他は、普通に起業したときに気をつけることなんかが書かれています。 あれ?そんだけ?はい、それだけです。だからタイトルが一万円起業なんですかね。
重なり部分をどう探すかについては自分の得意分野・スキル、あるいはそれを別のものに転用して、それに熱意をもって取り組むということしか書いてありません。そらそうかもしれません。得意なことは、自分が一番よくわかってるでしょう、ということなのだと受け取りました。それは転職をしたことがある方は同じようなことをしているはずですし、就職活動でもにたようなことをしていると思います。
しかし、それが「勝算がある」ものであるかどうかは別の問題だと思うのです。就職、転職のときはスキルを活用するとはいえ、就職した企業内での経験や教育によってスキルの幅が広がったり、深まったりしませんか。それは自分以外のだれかも事業を推進する役割を果たしていて、そうすることで「単独で勝算のあるスキル」でなくても集合体でうまくいけばいいからです。起業するときに活用すべきスキルは事業内容に直結していると思います。インパクトの大きさが違うと思うのです。別に一人で起業しなくてもいいじゃないか、となるのはそうなのですが、それでも一万円起業に登場する事例では2、3名くらいです。そうなると、組み合わせ方がうまいのか、全員がすごいのかわかりません。
勝算はどのくらいで感じることができるようになるんでしょうね。わたしは結構な壁があるように感じてしまいました。
壁を壊すには
ところで、自分の得意なことをひとりでノートにがーっと書き出してみても、「これは本当に得意なことなのか?」と冷静に見ることができるでしょうか。「おれExcelできるし」とかだと単独では非常に弱いですよね。何か足りない気がします。 一方、他人が興味があることって、ネットだけではなくそこらじゅうに無数にあり過ぎませんか。
このあたりをシャープにできるかどうかが壁を越えるためのポイントなのかもしれません。それはつまり事業計画というか、だと思いますが。
他人が興味があることが無数にあるといっても、他人がいま興味があることはアンテナを張っていればかなりの数に気づくと思いますし、しかもそれが「自分もお金を払う気になるか」くらいはわかりますよね。自分もサービスのユーザーに積極的になって、課金して使えば、「あーこんなことも興味があるよね」「これはお金返して欲しいな」って少し具体的になると思います。自分の得意なことも、自分でいろんなことをやってみて、周囲から「あれ、得意だよね」と言われたり、自分で「こんなことできたんだ」と気づくようになれば、少し具体的なものがみつかったりするのではないでしょうか。
ということは、他人にも自分にも興味を持ってアンテナを張っていれば、この本で書かれている条件に当てはまるものが見えてくるんだと思います。それがいつのことになるかは自分の努力次第といったところでしょうか。
勝算が見えたあとのアクション
あとは、それに気づいたら実行に移すことができるかにかかっていると思います。よくこういった書籍では「ほとんどの人が気づくのに実行しないんだ」と書いてますよね。昔読んだことのある本にも書いてたような気がします。
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
- 作者: ティナ・シーリグ,Tina Seelig,高遠裕子
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
- 発売日: 2010/03/10
- メディア: ハードカバー
- 購入: 475人 クリック: 17,353回
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これはこれで面白い書籍だったと思います。時々読み返してみることもあるので。
もしも気づいた「それ」が他人でも真似しやすいことなら強豪の出現までに次の手を打つことができるかも重要ですね。 スタート地点に立つまでに時間がかかるのに、走り出したら競争相手が誰なのか、どこにいるのか、周囲に気を配りながら全力疾走することになります。走り続けることができそうでしょうか?このあたりは本の中でも登場する起業家へのアンケート結果でも出てきている不安要素です。
特にネットビジネスの場合、「技術上のアンバランス」を利用する形でつくられたものが多い。ユーザーが不便だと感じることを解消するサービスを供給していた場合、そもそもの問題が修正されてしまえば需要がなくなる。(P.272)
こういった不安を抱えても走り出す、走り続けなければならないというのもサラリーマン感覚とは合わない気がしますね。可能な限り少ない元手で、うまく始めることができてしかも走り続けることのできる執念が必要というだけで疲れ果てそうですよね。少なくともかなりの勝算が無ければわたしはクタクタになってしまいそうです。
そのせいか、この本では「簡単だからみんなもやろうぜ」という雰囲気はまったく感じられませんでした。むしろ上手くやればこのくらいはいけるけど、出来そうになかったらやめとけくらいのノリに感じました。この本を読んで闘志を燃やす必要がない方は熱くならずに「ふーん」くらいでスルーしたらいいと思います。
最後に
もう子供の読書感想文のほうが良さそうなくらいの感想ですが、文庫化されてから購入して良かったと思っています。これは読み物だと思っていますので。「ああ、面白かった」で終わってもいいのではないでしょうか。
ネットを活用して起業して…なんてことをサラリーマン時代に夢に抱いていたものの、いざ「勝算があるか」を求めてテキストにしてみると「おれはいつか何かをやるぜ…!」というフワフワ感が急激に実体を伴いそうになってザワっとしてきます。
俺はやるぜ、という方は落ち着いてテキストに書き出してみましょう。できればノートにペンで。自分が書いた内容を読み返してみて、ゾッとしたら仕事に戻りましょう。それでも「あれとあれを組み合わせたら、いけそう」と思う方は素晴らしいと純粋に思いました。